著作権
2024.01.27
2024年1月1日をもって、ミッキーマウス、ミニーマウスのオリジナルバージョンの著作権保護の期間が切れました。今回は、このニュースと、著作権をテーマにしてみたいと思います。
ディズニーがミッキーマウスを初公開した映画が「蒸気船ウィリー」(1928年公開)です。その後、ミッキーマウスは大人気となり、次々と作品が作られてゆきます。
そして、ディズニーランド建設を経て、東京(千葉県浦安市)など、世界中にテーマパークが作られ、ミッキーマウスは世界一有名なキャラクターとして、2024年現在でも、人気を保ち続けています。
今回は、上述の「蒸気船ウィリー」が、パブリックドメイン(知的財産権消滅)を迎えました。今後は、誰でもミッキーマウスを使用して作品を制作できるようになります。といっても、現在ディズニーランドにいるミッキーを自由に使用できるというわけではありません。あくまで「蒸気船ウィリー」で登場させたミッキーマウスのみ、なのです。
現在のバージョンに至るまで、ミッキーマウスには様々なバージョンが存在しています。それらは未だにディズニーが知的財産権を保有していますので、これらを勝手に使って作品を創ることはできません。
ところで、今回のテーマとなっている著作権。これ、そもそもなんなんでしょうか?
何故著作権という権利が必要なのでしょうか?
そしていつごろ著作権というものが生まれたのでしょうか?
著作権というのは、作品を創造した者が有する権利です。この権利により、創った人は、自分の創った作品や、それを活用することによって収益を得たり、名声を得たりすることができます。(これを著作財産権といいます)また、著作者以外がその作品を扱えないようになると、作品には著作者のみの人間性が表現されるので、著作者の人格的権利を守ることができます。(これを著作者人格権といいます)
こうして作品を創る人に収益、人格が保障されると、その人はその才能を次の作品へと注げるわけです。そうでないと、作品の創造そっちのけで生活費を稼がねばならなくなってしまいます。そうなれば本来創造されるはずの作品ができず、文化的には大きな損失になってしまいます。それを防ぐのが、著作権であるといえます。
そもそも、「著作権」という考え方は、中世までは存在すらしないものでした。なぜなら、複製も手作業である時代には、書籍の作成とその複製の作成に、ほぼ同じコストがかかってしまうからです。例えば古代ローマ帝国時代では、著者に報酬が支払われるケースはあったそうですが、それは一回目の複製までで、複製の複製になると、著作者には何も支払われることはなかったそうです。どころか、普通は著者には、一回目の複製ですら自分の作品に対して何も払われなかったそうです。
その後、中世において、自らの著作を守る方法、複写に対する対策として、とても現代では考えられないようなユニークな方法が用いられます。それが、ブックカースです。
ブックカースとは、何か。というと、これがbook(本)curse(呪い)つまり呪いをかける。ということなのです。自らの作品や、自ら所有していた本の奥付などに、本を盗んだ者に災いが降りかかるよう、呪いの言葉を書いておく、というものです。いわゆるオカルトですが、キリスト教全盛の中世ヨーロッパでは、それなりに抑止効果があった......のかも知れません。
興味のある方は"ブックカース"でネット検索してみてください。実際のブックカースの文言やそれを和訳したものを見つけることができると思います。
さて、その後、グーテンベルクによる活版印刷の発明により、著作物に対して複製のコストが一気に下がることになります。そしてイタリアのヴェネツィア(当時はヴェネツィア共和国)において、最初の著作権法が生まれ、その後各国でも著作権法の整備がされていき、それが洗練されて、現在の著作権法になっていくのです。
世間の人々を感動させる著作物は、往々にして作者の全身、そして全霊をもって創造されたものであります。現代では、電子化によって著作物の複製はますます安易に行うことができてしまいます。翻って著作権保護の法律は、未だ全てが完璧というわけでありません。
安易に著作者からその利益をかすめ取ったりすれば、呪われてしまうかもしれませんね。