2024.06.26
英検は各級にそれぞれ推奨レベルが設定されています。しかし実際には、英検協会が示している難易度の目安よりも少し下の学年から合格を目指すことができるものとなっています。たとえば準2級は「高校中級」程度というのが英検協会が示しているものですが、実際には中学生で合格することも少なくありません。そこで、各級の大まかな難易度や、いつごろから受験可能かなどをご紹介いたします。
◇5級
基本的な難易度は中1の初級程度です。基本的な単語の意味や文章がわかるようであれば、合格の可能性はかなり高いです。リスニングもありますが、ある程度座学だけで進めていても聞き取りやすいものになっているため、いわゆる耳を鍛える、というような必要はありません。
基本的には英語を学習し始めてから1年程度で合格できるというのが基本的なイメージです。ただ、小学校の低学年から始める場合は、学習している内容によっては2年程度かかることもあるかもしれません。小5や小6で文法学習を進めるケースがよく見られますが、この場合に1年あれば十分に合格できるという難易度です。
なお、小学校のみで英語を習っているという場合で6年生の終わりに5級を受けてもやや難しいかもしれません。これは学校の英語は理解や覚えることに重点が置かれていないのが現状なので、学習としての英語に慣れておかないと英検は難しいかもしれません。
◇4級
内容としては中2の中盤くらいまでのイメージですが、文法は中1の内容全体が安定していれば十分に解ける内容です。リスニングで点数が稼げるケースが多いため、合格のために中2の英文法を扱うという必要もなく、それまでに学習したものがしっかり定着できているのであれば、おそらく合格となります。標準的には中2の冬などに受験される方が多いですが、中1の終わりに受験して合格される方も多くいらっしゃいます。
なお、4級まではライティングおよび面接(スピーキング)はありません。
◇3級
基本的には中2の内容までが問題なく理解できていれば3級は問題なく合格となります。ただ、中3になる前に受験する場合、中3の学習内容となる関係代名詞や分詞については、少し学習しておくほうがよいかと思います。関係代名詞については文を作れるようになるという程度には必要ありません。たとえば、
I have an aunt who lives in Osaka.
この文では、whoが関係代名詞ですが、文の仕組みを理解するというより、who以下がauntの説明になっている、という程度の理解で十分です。
3級から面接があるので、心配される方が多いですが、英検の面接は、準1級までは1次試験の後に準備することで間に合うことがおおいので、過度に心配する必要はありません。面接の流れをしっかりつかみ、実際に何度か練習しておけば、問題なく合格できます。面接を理由に受験を回避しようと思う生徒さんが少なくありませんが、基本的に英検は1次試験が合格できていれば、問題なく合格できるというのが2次試験のスタンスですので、積極的にチャレンジするとよいでしょう。高校受験(私立推薦・併願優遇)で利用するのであれば、中3の10月の受験機会までに合格する必要があります。
英語の非常に得意な方が中2の冬頃に、一般的には中3の秋での合格を目指すことが多いです。
◇準2級
出題範囲としては高校生の学習範囲を含みますが、中3までの内容がほぼ問題ないという状態であれば準2級は合格できます。ただ、中3生ですと準備なしに合格するにはやや難しいです。まず語彙パートが高校生レベルですので、非常に難しいですが、合格を目指すという点ではここで高得点をとる必要はありません。基本的には語彙パートは半分くらいの正解率を目指し、長文でしっかり得点するというのが中学生での合格パターンです。このため、過去問をしっかり解いて練習することが大切です。長文ははじめ難しく感じることが多いのですが、これを乗り越えると公立入試の英語長文が楽に読めるようになるという傾向もありますので、英語が得意な中3生はチャレンジしておきたいところです。
高校生になってから準2級を取得するというケースももちろん多くあります。高1終了時に準2級に合格できるというペースでも英語学習においては比較的順調に進んでいるケースといえます。実際に中堅大学では総合型選抜の出願資格にしているケースも多くありますので、英語がとても苦手という人でも準2級を取得して高校を卒業したいところではあります。
◇2級
基本的にはここから大きく難易度が飛躍します。基本的な出題範囲が高校卒業程度となっているため、中学内容だけでは文を読み通すことができません。準2級であれば長文のほうは中学単語が中心になっていますが、2級の長文は高校生で学習する単語を普通に使った文になっているため、単語力および文法力の強化が必要です。この点でいえば、中学生時に2級に合格というのは相当難しく、基本的に考える必要はないかと思います(※)。高1終了時に受験をし始めて高校2年生のうちに合格できるならば、英語力はかなり高いといえます。高3終了時の合格でも十分英語が身についているといえるものになるため、当教室にお通いの高校生には高校在学中に2級以上の合格を目指してもらっています。
2級くらいになるとリスニングで苦戦する生徒さんが増えてきます。準2級までであれば、リスニングのほうが点が高くなるというケースが少なくないのですが、2級のリスニングはしっかり対策をしないと点をあげることが難しいのが実際です。
※大阪府の高校受験では、英検2級(以上)を取得していると有利になるという高校があります。
◇準1級
2級からさらに難易度が飛躍してかなりの難易度になっています。2級を受かった後、数か月勉強すれば合格できるという難易度ではなく、単語力をかなり強化しないと合格は難しいです。準1級以降は新しい文法が必要になるということはありませんが、内容がよりアカデミックになる、全体的に高い文法知識が必要になる、そして文章自体が長くなるという点で非常に難しいです。また、リスニングでは、多くの生徒さんが苦戦するパート(Part2)があり、準1級合格最大の壁になっているといっても過言ではありません。このため、高校生にとっての準1級はかなりハードルが高いものになっています。ただし、長文だけで言うと大学受験でMARCHなどと呼ばれる難関大学を受験するケースの場合には準1級の長文を読めるような英語力は必要です。
現在の大学受験では準1級を取得できていると、一定の加点があったり、学校によっては英語が満点換算されるため、多くの高校生が受験生しています。高2の冬や高3の春に受験をする人が増えていますが、大学生になってからの受験、社会人の方の受験も一定数います。
◇1級(ご参考)
準1級合格のための単語力が約9,000語をといわれるのに対し、1級合格には12,000~15,000語の習得が必要と言われています。また、2次試験では2分間スピーチ(社会問題などについて)が必要になり、さらにそのスピーチに対してQ&Aもあり、非常に難しいものになっています。単語にしても、面接対策にしても、大学受験とは方向が違うので、大学受験のために1級を合格しておくということを考える必要はありません。早慶以上の超難関大学受験生には1級取得者がいるのが実際ではありますが、帰国子女や、中学受験の難関校出身者がおおいため、公立中学、公立高校での英語教育が主という人では、1級所得によるメリットも決して大きくないため、基本的には準1級までを考えるというスタンスで問題ありません。合格を目指すのなら、基本的には大学受験が終わってからということになるでしょう。ただし、大学以降は就職のために英語試験を受けることもありますが、TOEIC(L&R)のほうがよくつかわれています。さらに海外の就職であれば、TOEFLやIELTSの方が必要になるため、何かに有利になるという理由で英語資格試験を利用する大学生にとっては、これらを受ける中でついでに受けるというような位置づけになるように思います。
以降は、英語学習における英検の意味についての個人的な意見です。英語が嫌いな人にとっては興味のない内容かもしれませんが、英検学習を通して得られること、実感できることなどをご紹介いたします。
●英語を楽しむ、という実感を得るなら準1級以上の学習をするのがおすすめです。
英検と聞くと、受験に有利だからうける、というだけになってしまうことも少なくないとおもいますが、上位級の英語が読めるようになってくると、身の回りの英語がわかってくるようになり、英語自体を楽しく感じることがあります。
たとえば、洋画を吹き替えなしで見てみてください。このとき、字幕を英語にするのがおすすめです。実は映画はボソボソ話すことが多いので、耳だけで聞き取るのはかなり難しいですが、英語字幕があれば、何を言っているかがわかりますし、準1級くらいの英語力があれば、英語字幕があれば、映画にもよりますが、内容の6割程度は理解できるかもしれません。実際、ハリーポッターの映画では高校英語で使われている文法がたくさん出てきますが、準1級に合格できる英語力があれば、これらは十分理解できます。自分の学習した文法が出てくることで、英語学習が楽しくなってきます。せっかく英語を勉強するのですから、楽しく学びたいものですね。
●1級取得の意味
本文中にも書きましたが、1級取得によるメリットは多くありません。通訳案内士の英語試験が免除される、というのはありはするものの、このために1級を取得しようとする人は多くはないでしょう。となると多くの場合は、英語力の証明、ということになると思います。ですが、個人的には1級の合格にはさらに別の意味があると思っています。
英検1級の2次試験では社会問題について問われます。
たとえば、
「世界共通言語により世界経済に利益があるのか」
「人類は自らの滅亡を防げるのか」
「SNSは人々のモラルを下げたのか」
「現代において宗教は必要か」
「より多くの女性をリーダーに持つことが日本企業にとって有益か」
「テロリズムは根絶することができるか」
などがあげられます。1級の実際の面接では5つのテーマのうち1つを選んで2分間スピーチをすることになりますが、これらをそもそも日本語ででも考えることが普段あるでしょうか。実は1級の面接だけは合格率が60%となっており、採点基準も比較的厳しめです。このため、これらに対応するためには、市販の対策本で付け焼刃で対応するのでなく(それで合格する方もたくさんいますが)、普段からいろいろな社会問題に興味を持ってそれを英語で言えるようにする、という姿勢が必要です。さらに、上記のものは日本だけのことでなく、世界の状況に目を向ける必要があります。これこそが英検1級を受ける・取得する意味かと思います。「無知の知」という言葉があります。自分が何を知らないのかを知る、ということになりますが、英検の学習をとおして、様々なことを学ぶことができます。自分の興味のなかった分野へ足を踏み入れ、新たに興味を持つことにもつながります。英検1級の学習は学びのきっかけになるといえるのだと思います。