2024年6月(S-CBTは5月)より、3級以上のライティング問題が1問追加となりました。新しく追加されたのは以下の通りです
3級・準2級 |
Eメールの内容の返信を記述する問題 |
2級・準1級・1級 |
英文を読んでその内容を英語で要約する問題 |
これらの変更により難易度に多少の変化があるのは事実ですが、すべての級で「ライティングが増えたので、難化」ということは必ずしも言えません。もちろん、ライティングそのものが苦手という人にとっては難化と感じるとは思いますが、時間変更や、長文問題の削減等を考えると、下位の級はさほど難易度に影響はないと思われます。とはいえ、2級以上の要約追加による難易度の変化はやはりあった模様です。ただし、得意の分野や目標点によっては、大きな難易度の上昇とはならず、きちんと出題内容を把握して臨めば、決して必要以上にあわてる必要はないこともわかります。それぞれの級で見ていきましょう。※1級は省略
◇3級
今回追加されたのは、Eメールへの返信ですが、Eメール本文内で質問をされているので、その質問に答える形式です。2024年度1回目の問題では「How long~?」「How many pictures ~?」というように具体的に質問されているので、基本的にはそれに答えれば十分です。中2でも十分にこたえられる問題ですので、これまでの3級に比べて、大きく難易度が上がったとは言えないでしょう。さらに、この追加問題の影響で、試験時間が15分追加されているので、十分に考える時間はあります。結論としては、決して難化していませんので、特に3級受験を考えている中3生などは安心して受験してください。
◇準2級
追加された問題は3級同様、Eメールの問題ですが、3級と違うのは、文章を読んで自分で質問を作るという点です。この点で言えば、本文をよく理解したうえで質問を考える必要がありますが、文の内容は平易なもののため、質問は浮かびやすいとは思います。また、メール内で質問された内容にこたえて、その理由に触れますが、これは3級や準2級の従来のライティング問題のようなイメージで、自分はこう思う、なぜなら~だ、のような趣旨の内容を書くことになります。40語~50語で書くため、やや大変にうつりますが、模範解答としては中2レベルの文章となっており、練習しておけば、難しいものにはならないでしょう。従来のライティングに比べても書きやすいものになったのではないかと思いますので、過度に心配する必要はありません。
また、この追加により、準2級ではリーディングの問題の削減があります。初めの語彙・文法の問題で5問減り、長文問題(3問付き)が1つ減りました。リーディングで負担がかかっていた人にとっては、かえってリーディングの点があげやすくなったとも言えます。
試験時間については、全体で5分延長となりました。長文が1つに10分程度かかることがおおいため、3級同様、新しく追加されたライティングに15分使えると思われます。
全体的な難易度はしっかり調整されており、こちらもライティング追加によって難化したとは言えないでしょう。
◇2級
2級からはライティングの追加は要約問題になります。150語程度の長文をよみ、その内容を英語で要約するというものです。
要約する文章自体は準2級程度の難易度のものなので、2級受験者にとっては難しいものではないと思います。文章が3段落構成になっており、これをそれぞれ1文にまとめる形にすればよいので、ある程度形式に合わせて練習すれば、問題なく書けると思います。パラフレーズ(同義語による言い換え)が必要になるため、単語暗記の仕方に工夫が必要になりそうです。文法的な言い換えのアレンジがあると点が高くなりそうですが、最低限、具体的な表現をやや抽象化することができれば、合格点は獲得できると思います(これは今後わかってくるかと思いますが)。
2級でも長文問題の削減がありました。4問付きの大問が1つなくなり、短文空所補充からは文法問題と熟語問題の一部がなくなりました。この削減による難易度の変化がそれぞれになるかと存じますが、個人的な印象ではリーディングとライティングを総合的にみると(本会場受験の1次試験)が少し難化につながったようには思われます。英検の上位級は語彙問題を含む短文空所補充は半分程度正解し、長文で点を稼ぐのが多くのパターンです。削減された問題には文法問題を含みますが、ここは従来得点しやすい問題であったため、全体的に得点源になる問題が削減された形になります。このため、多くの2級受験生にとっては問題数が少なくなったものの、リーディング・ライティングをまとめて考えるとやや難化したと感じられるようかもしれません。
2024年6月現在、要約の点の付き方については、やや厳しめかもしれない(簡単に高得点は出ない)という印象です。これをふまえると、2級はやや難化につながった印象です。
※2級で高得点を狙う場合
大学受験では級の合格でなくCSEスコアという英検独自の点数が必要となるケースがあります。この場合、準1級で合格点をとるよりも、2級で高得点をとってCSEスコアを稼ぐという戦略も考えられます。この場合においては実はリーディング単体は易化につながったとも言えます。これは単純に問題数が減ったため、リーディングで高得点が出やすくなったことに由来します。準1級に合格できる英語力であれば2級はさほど難しくないので、リーディングを短い時間で仕上げ、ライティングにしっかり時間をとって仕上げるというような解き方ができるようになったともいえます。準1級レベルの英語力の人にとっては2級はある意味易しくなったのかもしれません。
◇準1級
2級同様の要約問題です。文章の長さは200語弱と少し2級より長いですが、文章自体の難しさは、2級のものと大きく変わらず読みやすい文章になっています。
3段落構成になっており、2級同様、問題提起、利点、欠点というように文が構成されているので、要約の方法は2級と変わりません(1級は文章の構成がやや違ったので、準1級の文章が今後変わってくる可能性はあります)。
長文と語彙問題の削減により時間の変更はなく、要約問題が追加された形です。ただ、準1級の要約は60語~70語でやや長めに書く必要があるため、ライティングが苦手だった人にとっては時間の制約がより厳しくなった印象です。基本的には多くの場合、ライティングが苦手な人が多いため、準1級は多少の難化につながったといえるように思います。
実際の要約の採点基準ですが、2級にも書きましたがやや厳しめで、簡単に高得点が出るわけではなさそうです。模範解答を見ると、2級以上に名詞構文や単語の言いかえパラフレーズが頻繁に行われていますので、文章が短いことを考えると、こういった文法のアレンジや単語力が如実に問われるもようです。また、語数指定は厳密に守らないと減点になる可能性が現時点であります(これは今後明らかになると思います)。ただ、合格点レベルの7割(※)程度であれば、準1級のライティングに慣れている人であれば、比較的とりやすいとは思われます。
※準1級はすべての項目で7割で必ずしも合格とはなりませんが、6割程度の項目があっても、8割を超える項目があると合格できることが多いです。(素点の1点が高得点ほどCSEスコア時の換算が高くなるので)
いろいろ書きましたが、はじめにも書いたように、もともとライティングが苦手という人にとってはやはり難化した(というより面倒になった)といえるでしょう。しかしながら、英語力を測るテストという視点で見たときには、問題の追加による時間の調整や難易度の調整はきちんとされている印象ですし、本文にも書きましたが、少なくとも3級や準2級は大きな影響はありません。要約の追加は多少の負担にはなると思いますが、広い目で見れば、極端な難易度変更にはなっていませんので、ぜひ挑戦していってもらいたいと思います。ライティングの練習は、英語力の向上に大きくつながりますので、今回の形式変更をきっかけに、英文を書く機会を増やしてみるとよいと思います。