横浜六浦教室のメッセージ
枕草子と猫~命婦の御許(みょうぶのおとど)
2023.02.18
2月22日は、にゃんにゃんにゃんの語呂あわせで「猫の日」です。
猫が日本にやってきたのは、奈良時代から平安時代の1200〜1300年前とされていました。
中国から仏教が伝えられた際、経典をネズミの害から守るため
船に一緒に乗せられてきたというのが長い間の通説です。
清少納言の「枕草子」には、「上にさぶらふ御猫(おおんねこ)は」という段があります。
第九段の冒頭部分をご紹介いたします。
【原文】
うへにさぶらふ御猫は、かうぶりにて命婦(みょうぶ)のおとどとて、
いみじうをかしければかしづかせ給ふが、はしにいでてふしたるに、
乳母(めのと)の馬の命婦、「あなまさなや。入り給へ。」とよぶに、
日のさし入りたるに、ねぶりてゐたるを、おどすとて、
「翁丸(おきなまろ)、いづら。命婦のおとどへ」といふに、
まことかとて、しれものははしりかかりたれば、
おびえまどひて御簾(みす)のうちに入りぬ。
【現代語訳】
殿上(=一条天皇)にお仕えする猫は、五位の位をいただいて
(名前を)「命婦(みょうぶ)のおとど」といって、
たいそうかわいいので、(天皇も)大切にしていらっしゃる猫が、縁側に出て寝ていたので、
(猫の)世話役の馬の命婦が、「まあ、みっともない。(部屋の中に)お入りなさい。」
と呼んだところ、
日が差し込んでいる場所に、寝ているのを、驚かそうと思って、
「翁丸(=犬の名前)は、どこにいるの。命婦のおとどにかみつけ。」と言うと、
(翁丸は)本当かと思って、愚か者(の翁丸)は走りかかったので、
(猫は)ひどくおびえて御簾の中に逃げ込んでしまった。
それを、たまたま一条天皇が見てしまったから大変です。
「翁丸を打ちすえて追放してしまえ。乳母も代えよ!」と激怒。翁丸の運命は?
命婦の御許(みょうぶのおとど)は、一条天皇がまさしく猫かわいがりしていた猫で、
「名前を付けられた猫」としては日本史上最古の記録に残る存在といわれています。