横浜六浦教室のメッセージ
鈍色(にびいろ)~平安時代の喪服
2024.06.03
鈍色(にびいろ)とは濃い灰色のことです。平安時代には灰色一般の名称であり、
のちに灰色、鼠色(ねずみいろ)にその座を取って代わられました。
現在の葬儀の色は黒と白ですが、平安貴族にとって鈍色は喪に欠かせないものでした。
服喪中には身を清め、心をつつしみ、仏事に専念して、いわゆる精進の生活をいたしました。
この間は酒も飲まず鳥獣魚肉なども用いず、音楽なども止めたもので、その例は、
『蜻蛉日記』にも『落窪物語』にも、また『源氏物語』にも見ることができます
喪中の室内は、平常の装飾を撤し、鈍色の縁をつけた蘆簾をたれ、同じ色の縁の畳、
同じ色の帷の几帳を用い、調度は黒色とし、床を低くして地につくようにします。
『源氏物語』朝顔の巻に、斎院が御ぶくでお下りになった時の生活を
「にび色のみすに、黒き几帳のすきかげあはれに」としるし、
『栄花物語』玉の飾には、姸子の崩後、一品宮禎子が、東の廊の板敷を下ろして
服喪されることが見えています。
「平安朝の生活と文学」池田亀鑑著 ちくま学芸文庫より引用