横浜六浦教室のメッセージ
蜘蛛の糸~芥川龍之介のはじめての児童文学作品
2021.05.14
「蜘蛛(くも)の糸」は、芥川龍之介が書いたはじめての児童文学作品です。
ある日、お釈迦さまは極楽の蓮池のほとりを歩いていました。
蓮池のはるか下には地獄があり、地獄を覗き込むことができます。
犍陀多(以下、カンダタ)という男が、地獄の血の池で溺れているのが見えました。
カンダタは生前、殺人や放火など多くの凶悪な罪を犯した大泥棒でした。
しかし、そんなカンダタでも一度だけ良いことをしていたのです。
道ばたの小さな蜘蛛の命を思いやり、踏み殺さずに助けてあげたのです。
お釈迦さまはカンダタを地獄から救ってあげようと、蜘蛛の糸を垂らしました。
カンダタが顔を上げると、一筋の銀色の糸がするすると垂れてきました。
カンダタはその蜘蛛の糸をつかんで、一生懸命に上へ上へとのぼります。
疲れたカンダタは、糸の途中にぶらさがって休憩していました。
ふと下を見ると、蜘蛛の糸に何百何千という罪人が、のぼってきています。
カンダタはこのままでは蜘蛛の糸が切れてしまうと考えました。
そして、こう叫んだのです。「この蜘蛛の糸はおれのものだぞ!下りろ!」
すると突然、蜘蛛の糸はカンダタがいる部分でぷつりと切れてしまいました。
カンダタは罪人たちといっしょに地獄へと、まっさかさまに落ちていきました。
あとには蜘蛛の糸がきらきらと光りながら、短く垂れているばかりでした。
一部始終を見ていたお釈迦様は、悲しそうな顔でまた歩き始めました。
仏教では、自分さえよければ他人なんてどうなってもよいという考え方を
「我利我利(=がりがり)」、この反対の考え方が、幸せになりたければ
相手を思いやりなさい。相手の幸せを思いやったた言葉や行動は、必ず
自分自身に思いやりとなって返ってくるという「自利利他(=じりりた)」です。
自利利他の生き方をするか、我利我利の考え方で生きるか、これこそが
幸せと不幸せの分かれ道なのです。