「公共」高1で実施、53.1% 「政治的中立性」など課題
文科省は5月19日、全国の高校や教委などを対象にした2022年度主権者教育実施状況調査の結果を公表した。同調査から初めて、高校1年生または2年生で必修化された「公共」の実施状況を尋ねたところ、高校1年生で実施していた学校は53.1%だった。「公共」の授業の課題については、「実際の選挙の時期は関連団体の協力が得にくい」「実際の選挙とタイミングを合わせようとすると年間計画が立てにくい」「現実の題材を扱うことと政治的中立性の確保の両立が難しい」「生徒のさまざまな実態に配慮した指導の工夫や効果的な教材の選択が必要」などの声があり、政治的中立性の担保や実践的なテーマを扱うが故のハードルに苦慮する学校現場の姿が浮かび上がった。
調査結果によると、高校3年生に対して3年間、主権者教育を実施している学校は94.9%と、19年度実施の前回調査とほぼ横ばいだった。また22年度から新たな学習指導要領が年次進行で実施されていることを受け、今回調査から高校1年生の状況も調査。それによると、高校1年生時点で主権者教育を実施していたのは、67.7%だった。実施した教科を尋ねたところ、「公民科」が67.0%に上り、「特別活動」(45.6%)、「総合的な探究の時間」(13.1%)と続いた。次に学習活動の内容を尋ねたところ、多い順に、「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み」(76.1%)、「模擬選挙など実践的な学習活動」(38.2%)、「現実の政治的事象についての話し合い活動」(29.3%)だった。授業をするにあたって連携した機関を尋ねたところ、「連携していない」との回答が64.9%で過半数を占めた。
主権者教育をする上での課題を巡っては、学校現場から「教師の主権者教育に関する理解に差がある」「実践的な活動を行いたいが、時間の確保が難しい」などと、教員の理解のばらつきや時間の確保の難しさを指摘する声が上がった。一方、教委からは「主権者教育=18歳選挙ばかりが強調される」「より具体的かつ実践的な学習が効果的であることは理解しているが、政治的中立性が保てない状況に陥る恐れがあることから、実施にちゅうちょする傾向がある」など、学校現場の本音が明かされた。
(「教育新聞」2023年5月19日号掲載記事参考)
<編集後記>
新課程で新設された「公共」は18歳での選挙権取得を念頭に、高校1・2年で履修することを基本としています。アクティブラーニング型学習などの難しさのほか、政治的中立性の確保という現場の課題が浮き彫りになりました。具体的な研修など、解決策が求められます。
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