大山教室のメッセージ
高校Watch6月3週目号
2023.06.20
どうして勉強をするの?
「どうして勉強をするの?」と子どもたちにこの質問をされたことがある人は多いかもしれません。では、この質問にどう答えたらいいのでしょう。
よくある回答例としては、「勉強をすれば、あなたの人生の可能性が広がるからだよ」でしょう。この意味としては「勉強をすれば偏差値の高い学校に入学でき、就職の際の選択肢が広がる」ということだと思います。つまり、ここでは「勉強=より偏差値の高い学校へ入学するため」ということになります。
これを真っ向から否定できる人は少ないかもしれません。実際、多くの子どもたちが文字通り「必死になって」勉強するのは、受験という目標が明確に生まれる中学3年生だったり高校3年生だったりします。逆に受験がなければ、多くの子どもたちは「自主的に」勉強なんてしません。
大人たちは自身が受験をしてきた経験から、子どもたちに勉強の大切さを伝えようとします。しかし、子どもたちは、その話が熱を帯びれば帯びるほど冷めてしまうかもしれません。大人と違って、子どもたちはそんな未来のことなど想像できないからです。
では、どうして勉強をするのでしょうか。僕も長らくこの答えには窮していたのですが、最近はこのように答えています。「それは、あなたがいろいろなモノやコトとつながるためだよ」
我々が生きる世界は、さまざまな「意味」であふれています。しかし、それらの意味を知らなければ、人はそれらとつながることができず、ただ通り過ぎてしまいます。マンホールが丸いのはどうしてだろう?、太陽はどうなっているの?、海外の人たちはどんな言葉を話しているの?...。
知りたかったらGoogleで調べたらいいと思うかもしれませんが、意味を知らないことを自分で調べることなんてできません。加えてGoogleは、その人の関心に沿った情報をどんどん提案してきます。そのため、そのままでは自分の関心のある狭い範囲の中でしか生きることができません。
実は、勉強をすることの意味なんてものは、勉強をする前の人には説明できないのではないかとも考えています。初めからその有用性が示されている商品にばかり囲まれている私たちからすると、「勉強した結果は勉強した後にしか分からない」なんて言われると不安になるかもしれません。でも、そもそも勉強とは「自分の知らない自分になる過程」だと捉えれば、こうした考えも受け入れられるのではないでしょうか。
(「教育新聞」2022年1月12日掲載記事参考)
<編集後記> 勉強することは、良い大学に行って将来の可能性を拡げるというだけの話ではありません。日常生活においても知識は生活のクオリティに関係してきます。たとえば先日の大雪で、積もった雪(道路や車)に水をかけて溶かしてしまった結果、翌日一面凍り付いてしまい大変なことになったというエピソードがSNSで話題になりました。こうしたことは学校での学習から「そんなことをしたら凍り付いてしまう」と判断できることです。また、東日本大震災の原発問題では、福島から避難してきた子供に対して「その子に近づいてはダメ」と我が子に指示する親の姿がありました。こうしたことも放射線に対するきちんとした知識があれば起き得ないことで、無知は差別につながることもあります。学ぶ目的は経済的に豊かになるためだけではありません。より人間らしく快適な人生のために必要なことなのだと思います。 |
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