神戸深江教室のメッセージ
主語と述語
2024.09.17
主語の使い方
日本では、会社の社長や政治家などがプレゼンや演説をする時に、「私は何年計画でこうします。よって、皆さん頑張ってついてきてください」という言い方をされることがあります。「自らの考えを発信する」という意味では差し障りはないですが、社員や聴衆などからするとある種の「壁」を感じてしまうことがあるかもしれません。
アメリカのオバマ元大統領は2009年1月20日の就任演説で、「we」を62回、「our」を68回、「us」を23回も使ったそうです。皆さんも記憶にある「Yes, we can!」(そう、私たちは成し遂げられる!)というキャッチコピーでも「we」が使われています。
参考:アメリカンセンターJAPAN
ちなみに、その3カ月前に麻生太郎氏が首相に就任したのですが、その時の演説では、「私(I)」は26回、「私たち(we)」は0回でした。
参考:データベース「世界と日本」
出典:東洋経済オンライン_2022.03.23
主語を「we」にすることで、聞いている側を巻き込む効果が生まれてきます。つまり、一体感が生まれ、聞いている側も他人事ではなくて自分事だと感じるので、単純に「聞く(hear)」から関心を持って「聴く(listen)」に変化していきます。
このように、主語を「私(I)」から「私たち(we)」に変えることで、聞いている側の心境も変化していきます。改めて、主語の重要性を感じさせられます。
主述のねじれ
「主述のねじれ」とは、文章から修飾語を抜いて主語と述語だけを並べたとき、文章が成立しない状態のことを言います。「主述のねじれ」が起きていると、相手に文章の内容が伝わりづらく、ストレスを与えてしまうことになります。例えば、「私の特技は、英語を話します。」という文章を読んでどのように感じるでしょうか?主語「私の特技は」と述語「話します」が正しく結びついていないので、違和感を感じる方が多いと思います。
この文章を「私の特技は、英語を話すことです。」や「私は、英語を話すことが得意です。」に修正すれば、主語と述語が正しく対応した文になり、読みやすくなります。
では、下記のように少し長い文章で、( )に入るフレーズとして文法的に最も適切なものは①から③のどれでしょうか?
社長は、社内業務の全面的なデジタル化を宣言しつつ、その進め方をめぐっては各部署の立場に隔たりがあり、( )。
① その調整は困難を極めるだろう。
② 部署によって異なる目標が設定された。
③ 粘り強い調整が必要になると語った。
この問題は、文頭の主語「社長は」を受ける表現はどれが正しいかを考える必要があります。①から③まで、それぞれ頭に「社長は、」を置いてみて意味が通じるものが正解です。
① 社長は、その調整は困難を極めるだろう。
② 社長は、部署によって異なる目標が設定された。
③ 社長は、粘り強い調整が必要になると語った。
意味が通じるのは、③だけなので、正解は③です。
係り受け
「係り受け」とは、言葉と言葉の関係性です。文章にはいくつもの文節が使われており、「係る語句」と「受ける語句」があります。言葉同士の関係を誤ってしまうと、文章がねじれてしまい、違和感のある文章になってしまいます。例えば、次の文章を文節で分けてみます。
「私は、きれいな満月を眺めた。」 ➡ 私は / きれいな満月を / 眺めた
① 私は「眺めた」
② きれいな満月を「眺めた」
このように、異なる語句が意味の上でつながっている関係を「係り受け」といいます。「係り受け」の関係には、「主語と述語が関連しているもの」と「修飾語と被修飾語が関連しているもの」の2種類があります。① 私は「眺めた」
② きれいな満月を「眺めた」
主語である「私は」に対して、述語は「眺めた」となり、修飾語である「きれいな」に対して、被修飾語は「満月」となります。
では、下記の問題はいかがでしょうか?
出典:モノグサ
これは2021年の早稲田大学人間科学部の入試問題です。コンピュータについて書かれた文章の読解で、一見難解なように感じられるかもしれませんが、主部と述部の関係さえ分かれば問題を解くことができます。
問題では「構文論(シンタックス)的であるだろう」という述部の説明について聞かれているので、これに対する主部を見ると「計算機であるコンピュータ」が該当します。つまり、ここではコンピュータが主語となっている選択肢を選べば良いので、答えは「ニ」となります。
読解力は、すべての教科の基礎となるものです。語彙+文法+論理の3つの要素を鍛えて読解力を身につけましょう!