探究のプロセスは学習指導要領(※参照)において、「探究における生徒の学習の姿」として次のように示されています。「課題の設定」⇒「情報の収集」⇒「整理・分析」⇒「まとめ・表現」を一つのプロセスとし、「振り返り」を経て、また次の探究のプロセスへとスパイラルに発展していきます。また、一方向に順番に進むだけでなく、「情報の収集」から「課題の設定」に戻って、もう一度考え直したりというように、行ったり来たりしながら進んでいきます。
探究的な学習は、生徒が全てのプロセスを一から進めるのではなく、最初は教員が課題を提示し、「情報の収集」の一部を生徒がやってみたり、収集した情報を用意しておいて「整理・分析」だけやってみたりすることもできます。このプロセスは、「総合的な探究(学習)の時間」だけで用いるものではなく、各教科でも意識させるようにします。
さて、担当している授業の学習内容を教員が最も深く理解するタイミングは、授業準備を行っているときではないでしょうか。
どうやって説明したら生徒たちに伝わるか、学習につながる日常の場面は何だろうか、どのような流れで展開しようか、課題はどのようなものが適切か......などとあれこれ頭を悩ませているうちに、理解が深まっていきます。そうしてできた授業案を基に複数のクラスで教えると、内容が自分の中で消化され、生徒がつまずきやすいところも分かってきて、さらに理解が深まっていきます。
しかし、こうした教員の説明を生徒は一度聞いただけで理解できているのでしょうか。教員自身は、その知識が当たり前のものになるまでかなりの時間がかかっているのに、生徒に伝えるのはほんの一瞬です。「教科書の全てを終わらせなければならない」という責任感が優位になり、先を急いではいないでしょうか。生徒の理解が後回しにされていないでしょうか。教員が一方的に教えるだけでなく、各教科の授業と「総合的な探究(学習)の時間」を両輪として、生徒の「問い」から出発し、生徒が自分でつかみ取る授業に転換していきたいものです。
※文科省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」p・20(2018年)
<編集後記>
日本型「詰め込み教育」は多くの生徒に基本的知識を持たせることに貢献してきました。その一方で、学習に対して受け身の姿勢を作ってしまった側面があり、「学ぶ意欲」「疑問や興味を抱き、それを自ら解決しようとする姿勢」に課題を抱えています。「大学に進学したいが、別に学びたいことはない」という受験生がその典型例です。探求的学習がうまくいけば、こうした問題に対して一石を投じることになると期待されますが、本文中にあるように、教師側の課題も大きいなど、根深い問題になっています。
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(「教育新聞」2021年8月8日掲載記事参考)