2022年は十干十二支(=じっかんじゅうにし)で壬寅(=みずのえとら)、
十二支で3番目の「寅(=とら)年」です。
「とら」は「虎」とも書きますが、これは動物の「タイガー(=tiger)」を
指しています。虎はライオンと並ぶ力強い動物ですが、
東洋では「強さ」「権威」の象徴と考えられてきました。
このため虎が登場する慣用句や諺がたくさん生まれたのです。
ここでは「虎」を使った慣用句やことわざを3回に分けてご紹介します。
①「三人成虎」(=さんにんせいこ)
意味:真実でないことも多くの人が言えば、いつの間にか真実として広まるというたとえ。
由来:「街に虎が出たと言うと信じるか」と尋ねると「信じない」と答えた。
「それならもう一人別の人が同じことを言うと信じるか」と尋ねると「わからない」と答えた。
「三人ならどうか」と聞くと「信じるようになるだろう」と言った故事から。
「戦国策/魏策・秦策」より
類義語:市虎三伝(=しこさんでん)、市に虎あり
②「虎渓三笑」(=こけいさんしょう)
意味:あることに夢中になって、他のことを全て忘れてしまうこと。
由来:「虎渓」は中国の江西省の廬山にあったとされる谷の名前。「三笑」は三人で笑うこと。
中国の東晋の慧遠(=えおん)法師は、廬山の寺にこもって、虎渓よりも外に出ないと
誓っていましたが、詩人の陶淵明と道士の陸修静を見送るときに話に夢中になり、
虎の吠える声で虎渓を超えてしまった事に気づき、三人で大笑いしたという故事から。
「廬山記/叙山北」より
③「苛政(=かせい)は虎よりも猛し」
意味:悪政は人を食い殺す虎よりも恐ろしいということのたとえ。
由来:「苛政」は民衆を苦しめる過酷な政治のこと。
孔子と墓の前で泣いているある婦人との会話から
孔子「なぜ泣いているのですか?」
婦人「以前、虎に親と夫を殺されました。さらに今回息子も殺されたのです。」
孔子「なぜここを去らないのですか?」
婦人「ここには重税も残虐な刑罰もないですから。」
「礼記/檀弓下」より
以上「虎は死して皮を留め人は死して名を残す」というように、自分の死後も
語り継がれるようないい塾にしたいと思っている寅年の教室長が書きました。
※「虎は死して皮を留め人は死して名を残す」とは、虎が死んだ後にも美しい毛皮を残すように、
人は死んだ後に名前を残すような生き方をすべきだという教えです。「十訓抄」より